「原字ものがたり―デジタルフォントの原型」展

「原字ものがたり―デジタルフォントの原型」展
展示会期2010年06月07日[火]〜06月19日[土]
開廊時間12:00-19:00(最終日のみ17:00まで、日曜祝日休廊)  12日(土)16時~18時の間は座談会申し込み以外の方は入場できません。 ご了承下さい。
備考 座談会:6月12日(土)16時~18時※先着50名様のみ限定。
定員に達しましたため募集は締め切らせて頂きました。お申し込みありがとうございました。

小宮山博史氏在廊日:6月7日(月)、12日(土)、19日(土)は12時より終日(19日のみ17時まで)

参加各社から門外不出の原字群が到着し、展示に向けて作業は熱を帯びてきました。当初は阿佐ヶ谷美術専門学校の授業「タイポグラフィ」単独の企画で進行していました。しかし原字を展示するという、今まで誰も企画したことがない日本初の展覧会を成功させるために、いまでは阿佐ヶ谷美術専門学校あげて積極的な協力体制になっています。手書きの美しい原字をたくさんお見せたいところですが、小さいギャラリーですので展示枚数も限られています。その制約の中で、参観される皆様にご満足いただけるよう努力を尽くしています。ご期待ください。

 

展示内容について

*デジタルフォントの出現
前回のご案内にも記しましたが、デジタルフォントを日常的に使っておられる方々のほとんどが、どのようなプロセスをへて眼前に登場してくるのか意識していないと思います。ましてやその原型の文字が一字ずつ手書きでつくられていることなど、想像したことのある人はほとんどいないでしょう。
書体デザイナーはそうした状況のなかで自分の技術と思索を深め、少しでもユーザーのお力になるべく努力を重ねているのです。それは、印刷表示用書体なくしては、日本の技術・文化・思想を受け継ぎ次世代に送り渡すことはできないのだという自負があるからでしょう。こうした情熱が結晶した原字の精度と完成度にきっと驚かれるはずです。

*デジタルフォントの歴史
デジタルフォントの原字は、今まで培われてきた書体制作の技術や配慮を理解して、それらを継承展開しているのです。では先人の技術とはどういうものか。今回の展示のもう一つのポイントは書体制作の歴史を顧みているところにあります。金属活字時代の原型、それは原寸サイズに手彫りされた「種字」といわれるものですが、そのいくつかをご覧にいれます。明治8年完成の弘道軒清朝体。これは日本初の打ち込み法(パンチ法)を使って鋳造された活字ですが、その父型と母型も展示します。そして、築地活版最後の彫師安藤末松氏の木彫種字と彫刻刀、ルーペ。戦後岩田母型製造所の種字彫刻で活躍された名人大間善次郎氏の木彫種字、精興社書体で有名な君塚樹石氏の地金彫り種字2本など珍しいものなども展示します。展示スペースに限りがあるため、わずかな展示でお許しをいただきます。

*「書体」の現場から
会期中会場内で電胎母型製造のプロセスやプランタン印刷所などの現場の映像を流す予定です。

*座談会「書体を創る」
会期中には座談会を開きます。
フォント制作における各社の技術をお話ししていただきます。
日時;6月12日(土)午後4時より会場にて
出席;次の5社の5氏です。

・有限会社字游工房:鳥海修氏
・ダイナコムウェア株式会社:小畠正彌氏
・有限会社カタオカデザインワークス:片岡朗氏
・株式会社イワタ:水野昭氏
・大日本スクリーン製造株式会社:三橋洋一氏

司会;向井裕一氏(グラフィックデザイナー)
会場が狭くご希望のすべての方々を受け入れることができません。やむを得ず参加者を50名に限定させていただきます。
※定員に達しましたため募集は締め切らせて頂きました。お申し込みありがとうございました。

*展示解説
会期中の数日、展示品の解説を書体史研究者小宮山博史氏がわかる範囲でいたします。
6月7日(月)、12日(土)、19日(土)は12時より終日(19日のみ17時まで)在廊致します。

*図録
展示物と活字制作の技術略史をまとめた図録(A4判20頁)も用意いたします。有料ですがお求めください。

 

「原字ものがたり―デジタルフォントの原型」展

小宮山博史

書体を選択し、サイズを指定すれば印刷・表示用書体は画面に表示され、必要に応じてきれいなプリントアウトも簡単に手に入ります。コンピュータが日常生活に必要不可欠な機器となった現在、搭載されている書体は水や空気と同じようにその存在が意識されることはありません。
欧米の500年には到底およびませんが、今につながる欧米の近代的な活字書体製法が日本に導入されて140年ほどになります。その間金属活字・写植・デジタルフォントと文字生成方法は変わりましたが、書体の原型(これを種字とか原字と言います)は、どこかで誰かが原寸の大きさで彫刻したものか、あるいは紙の上に拡大した形で手書きされ墨入れされたものを使っていることだけは変わっていないのです。しかし、種字あるいは原字は書体制作企業の貴重財産として社内の奥深くに蔵されており公開されることはありませんでした。そのため書体を日常的に使用する書籍・雑誌の編集者や、ブックデザイナー、グラフィック・デザイナー、タイポグラファーであっても印刷・表示用書体の種字や原字を見た人はほとんどいません。
「原字ものがたり―デジタルフォントの原型」展は、現在使われているデジタルフォントの手書き原字そのものを日本で初めて公開展示するものです。
種字や手書き原字の精度は、彫師や書体設計者、書体デザイナーの時間をかけた修練でしか獲得できないものなのです。その精度がその書体の品質を左右することはいうまでもありません。本展示によって今お使いのデジタルフォントが、どのようなプロセスをへて画面上に再現されているのかを理解していただくきっかけとなれば嬉しく存じます。

参加されるフォントメーカーは次の5社です。

・有限会社字游工房

・カタオカデザインワークス

・株式会社イワタ

・ダイナコムウェア株式会社

・佐藤タイポグラフィ研究所

展示書体については現在、検討中です。また会期内にギャラリートークや座談会も計画しております。

本展は阿佐ヶ谷美術専門学校視覚デザイン科2年の選択科目「タイポグラフィ1・2」によって企画され、展示するものです。
本講座では、担当講師が精選した印刷、書体に関する論文や研究書などの文章を深く読み込んだ上で、内容にあった書体を選択し、各自が最良と考えた組版仕様を組版ソフトInDesign上で独自に設定し、文章を組んでいきます。最終成果は四六判の書籍とし、表紙を含めたブックデザインとしての完成度を求められています。担当講師はブックデザイナー、グラフィック・デザイナー、タイポグラファー、書体デザイナー、校正者の7名で、この7名が共同して各回の講座と演習を運営するという日本でも珍しい特殊で贅沢な講座です。タイポグラフィの世界は広く深い知識の上に立った、優れた技術によってしか生み出せないという担当講師達の共通認識が授業を支えています。そしてこの講座を開講している学校の問題意識がタイポグラフィのより良い進歩を支えています。